コラム

icon 新しいほうろう
抗菌ほうろう
 
ほうろうはガラスの表面をもつことから、本来洗浄性にすぐれている。それに抗菌、防かび機能を付与したほうろうが最近の清潔志向にもささえられて出現した。抗菌、防かび性とは、細菌や菌類の活動を抑制する効果を意味する。抗菌効果を有する成分としては、銀、 銅、 亜鉛、錫などが考えられている。ほうろうでは、主に銀が利用されている。銀イオンは微生物細胞中の活性酵素と結合しやすく、その活動を奪うとされている。釉薬中に銀イオンが安定に存在し、水分の存在により極微量ずつ溶解することで抗菌性を発揮する。銀などの抗菌成分を釉薬に添加する方法は、@担体にイオン交換するか担持させた抗菌剤を釉薬中に添加混合する。Aフリットに銀などを溶解する方法がある。抗菌ほうろうは、キッチン用品や病院、食品工場の内壁材などに利用され用途が拡大しつつある。病院などの利用方法の延長線上には、環境内の極微量成分、例えば環境ホルモンなどの研究あるいは、ウイルスや細菌フリー空間を確保するために不可欠な「環境クリーンルーム」などに、ほうろうが最適な材料であることが浮かんでくる。
アルミメッキ鋼板を用いた抗菌ほうろうの例
構成
病院での使用例
ほうろう基盤
 
ほうろうは、金属(導電体)とガラス(絶縁体)の組み合せであることから古くから電子基板材料として着目されていたが、ガラス層の電気的、化学的性能が不十分で不安定なことより実用化が進まなかった。これらの欠点が80年代後半に克服されることにより、ほうろう基板が実用化した。その特徴は、@ガラスをアルカリフリーとし、電気絶縁特性を向上した。その結果、厚膜回路形成のための繰返し焼成が可能となった。Aガラスをアルカリフリーで結晶化ガラスとし、ほうろう基板の耐熱温度を1000℃とした。その結果、アルミナ基板用厚膜ペーストが使用可能となった。B釉薬の塗布に泳動電着法を用いることにより、100μm程度の均一な厚さのガラス絶縁層を連続してつくれるようになった。ただし、製造プロセスは、一般ほうろうとかなりおもむきを異にする。ほうろう基板の初期開発目標は、ハイブリットIC用であったが、 高放熱性、高耐熱性、高強度、高耐衝撃性、形状任意性などが期待され新しい基板となった。代表例は、自動車の抵抗回路基板である。さらに、回路基板でない応用も生まれはじめている。
ほうろう基盤回路
カーエアコン用レジスタ
 
静電気帯電防止グラスライニング
 
グラスライニング(GL)は、化学工業用などに理化学ガラスなみか、それ以上の耐薬品性や耐熱性などをそなえた特殊なほうろうといえる。通常のGL反応容器はガラス層の体積抵抗率が1012〜1014Ωm程度であり、ベンゼン、ヘキサンなどの非水系の液体を反応容器内で高速回転により撹拌すると、帯電電荷量が漏洩電荷量を大幅にうわまる数万から数十万ボルトの静電気が発生し、反応容器にアースを設置していても、ガラス層の絶縁破壊や爆発事故の危険性がある。そこで開発されたのが静電気帯電防止グラスライニングである。静電気帯電防止GLは、ガラス層の体積抵抗率を108Ωm以下にして静電気を電気伝導で徐々に漏洩させることにより、 ほとんど帯電しないようにしたGLである。そのために、 釉薬中に白金繊維を分散させ塗布している。製造プロセスは、大きさの大きいことを含め、一般ほうろうとは異なる。静電気帯電防止GLは、化学反応容器としてだけではなく、応用範囲が拡大していくものと期待される。
 
ステンレスグラスイニング
 
通常のグラスライニング(GL)は、低温で圧力がかかると、脆性破壊をおこす可能性がある。そこで、低温用鋼板として低温圧力用炭素鋼鋼板(SLA)が利用されるが、せいぜい−45℃までしか使用できない。ただし、通常のGLに、用いる釉薬が利用できるメリットがある。しかし、医薬品などの精密化学製品を合成する分野などで極低温(−196℃)での使用にたえるGLの需要も増えてきた。一方、通常の鋼板によるGLは、当然であるが、外側 (ガラス層でない側)が錆びやすい。このことは、医薬品製造や食品工業分野で管理上等の問題となる。そこで、これらの問題を解決するために登場したのがステンレスGLである。ステンレスとしては、オーステナイト系ステンレス鋼でしかも低炭素鋼であるSUS304LやSUS316Lが用いられる。炭素がきらわれるのは、炭素が存在するとほうろうにしたとき、機械的強度の低下や耐化学性の低下原因に なるためである。ステンレスは、これま た当然のことであるが、通常のGL鋼 (軟鋼)に比べ、酸化しにくいためにガラス層の密着性が悪い。さらに、膨張係数が大きいなどの問題がある。そこでこれらを解決するために、専用フリットの開発が不可欠となる。
ステンレスGL反応容器
炭素鋼板GL反応容器
 
超表面平滑ほうろう
 
ほうろうは、ガラス層の表面が滑らかなため、本来、汚れがつきにくい、汚れを除去しやすい、臭いがつきにくいなどの特徴をもっている。最近の清潔志向は、これでも満足できなくて、より一層よごれがつきくい、汚れを除去しやすいほうろうが求められている。そのためにはガラス層表面の凹凸を無くし、表面を平滑化することにより、汚れの付着を防ぎ、汚れの除去を容易にできると考えたのが、超表面平滑ほうろうである。このほうろうは清潔でメンテナンスフリーである。超表面平滑化技術はナノテクノロジーであるともいえる。ほうろう表面の凹凸は、釉薬中に含まれるフリット以外の粘土、アルミナ、硅石、無機顔料などの添加材粒子や焼成により析出する酸化チタン、酸化ジルコニウム 酸化アンチモンなどの結晶粒子がガラス層表面に存在することが原因であると考えられる。そこで、ガラス層の最表層を完全なガラスで覆うことにより、凹凸を消し、超平滑表面を実現している。ほうろう浴槽として市販されている。
超表面平滑ほうろうの模式図→
 1価のプラスイオンの発生を高め、
  よごれを はねかえす。
従来の鋳物ほうろう浴槽表面(焼成直後)
新しい鋳物ほうろう浴槽表面(焼成直後)
 
IH 調理器用なべ、ケトル、ポット
 
 最近 IH 用の調理器が小売店等で多くみられています。これは電磁誘導加熱(Induction-Heatingを略して IH としたもの)によりなべなどの調理器具を加熱するので、調理器には磁性が必要で、鉄や一部のステンレスを調理器の材料にするのが普通です。IH 販促のため無理に磁性を持たせた材質使用の調理器も見られますが、鉄ほうろうのなべやケトルがIH調理器用に最適なものとして利用されています。
 (社)日本琺瑯工業会は、琺瑯がIH調理器用として電気効率に優れた材質なので、消費者に安心してご使用して頂けるための目印として、認定マーク制度を設けました。このマークは2種類あり、IH が200Vの高出力用のものと、100V用とに分かれています。以前は100V用だけでしたが、電力会社が、配電電圧を2倍にすれば必要電力が半分で済み、熱損失が4分の1になるので、省エネ対策のもと200V化を推進しました。これで IH 機器メーカーは200V用と100V用を発売しております。
 200VのIH用は、高出力のため熱効率のよい琺瑯では短時間で温度が上昇し、うっかりすると空焚き状態になります。場合によってはホーローの軟化温度500℃以上に達し、IH 本体にまで傷つけてしまう恐れもあります。
 IH 機器は、温度センサーの取り付け位置などで機器の種類によりセンサーの安全機能の作動に差が見られます。空焚き防止や天ぷらなどでは特に温度管理の注意が必要です。機器メーカーの使用上の注意をお守り下さい。
 (社)日本琺瑯工業会では、会員が IH 用のマークを添付するための認定基準を設けています。基準には、使用鋼板の厚さ、底の形状、耐熱衝撃性等のほかJISS3012家庭用ほうろう器物の規定を準用しています。
 認定マークでは、200V用と100V用とでは使用鋼板の厚みに若干の差があります。そのほかには実質的な差はあまりありませんから200V用は100Vの IH に使用しても問題ありません。なお、IH 用でも従来どおりガス調理機器に使用できます。
 工業会でマークの認定の際、会員から品質及びPL保険の責任について保証させていますので、このマークの有無を調理器のお買い求めの目安として下さい。
     
 

 

IH 調理器用鋼板製家庭用器物の品質基準
なべ、ケトル及びポットを対象に、IH 調理器のトッププレートに接する面の直径が12cm以上26cm以下のものに適用する。
試験項目
試験内容
な べ
ケトル及びポット

 1. 使用鋼板の板厚
      200V用
      100V用


1.0 ミリ以上
0.8 ミリ以上

0.8 ミリ以上
0.7 ミリ以上

 2. 底部の凹み寸法
      200V用
      100V用


常温で 1.5 ミリ以下
常温で 2.0 ミリ以下

 3. 底部の内側への湾曲寸法
   200V用、100V用共
底の中心部分での内側への湾曲寸法をディプスゲージ等で測定する。

油を入れてIHの最高出力で220度まで加熱し、200度に下がったとき、底の内側への湾曲寸法が1.5ミリ以下であること。

水を入れて沸騰したとき、底の内側への湾曲寸法が1.5ミリ以下であること。
 4. 底の耐熱衝撃性 IH 調理器で出力を調整して、5分以内の空だきにより、底の中心部附近の温度が150度になるまで加熱した後、15度から20度の水を満水になるよう一気にいれて急冷する。
この熱衝撃を10回連続して行い、底の内側への湾曲寸法が前記 3 の数値に適合すること。また、琺瑯層にひび割れ、はく離のないこと。
 5. なべ底部の琺瑯層の耐熱性
      200V用
なべ底を上にしてその上部に厚さ1ミリから3ミリ程度の板ガラス(ソーダ石灰ガラス製)をのせる。そしてあらかじめ500度に余熱した加熱器(炉)に試料を入れる。500度のまま30分間保持し、常温まで冷した後板ガラスを取り除くとき、板ガラスが容易になべから離脱でき、かつ琺瑯層に融け跡のないこと。
 6. 上記の基準以外
  (外観、構造、性能等)
密着性、耐熱水性、耐酸性、取っ手取付強度等、当該製品ごとにJIS S 3012(家庭用ほうろう器物)の該当基準を準用する。


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